岡山大学 理学部

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光化学系IIの立体構造をクライオ電顕で高精度に決定~生体内環境に近い状態での分子構造決定に光明~

2021年03月22日

岡山大学
筑波大学
理化学研究所

◆発表のポイント

  • 光合成過程で水分子を分解して酸素分子を放出する反応を触媒する光化学系IIの立体構造を、クライオ電子顕微鏡(電顕)で高精度に決定しました。
  • その構造から、タンパク質分子はクライオ電顕観察の際に照射される電子線により損傷を受けるが、電子線量を調節することで損傷を大幅に減少できることが明らかになりました。
  • これらの研究結果は、すべての生体分子の損傷の無いクライオ電顕構造を決定するための指標となります。

 岡山大学異分野基礎科学研究所の加藤公児特任准教授、中島芳樹特任助教、秋田総理准教授、沈建仁教授、筑波大学の宮崎直幸助教、理化学研究所の濵口祐研究員、米倉功治グループディレクター(東北大学 多元物質科学研究所を兼任)らの共同研究グループは、クライオ電子顕微鏡を用いて、シアノバクテリア由来光化学系IIの構造を1.95 Å(1 Å = 1×10–10 m)の解像度で高精度に決定しました。得られた構造は、クライオ電顕観察の際に照射される電子線により、損傷を受けていました。そこで注意深く電子線量を調節することで、損傷を大幅に減少させ、且つ高精度を保った構造が得られました。この構造はX線結晶構造解析で解析されたものと類似していましたが、より生体内に近い状態を反映する特徴を持っていました。本研究成果は、日本時間3月22日(月)19:00(英国時間:22日10:00)、英国の科学雑誌「Communications Biology」に掲載されました。
 この研究成果は、クライオ電顕観察の際に用いられる通常の電子線量ではタンパク質に損傷を与えており、損傷を回避するためには電子線量をどのぐらい減少させる必要があるかを決定するための指標となります。



図 1. 光化学系IIの電子線による損傷の様子。


図 2. 光化学系IIの全体構造(a)とサブユニットPsbYの構造(b)。

◆研究者からのひとこと

この研究は生化学的なタンパク質試料調製法、最先端装置と構造解析法を駆使して、はじめて達成することができました。研究成果を発表するまでには多くの困難がありましたが、共同研究者の皆様、研究室メンバーの協力により得られた成果です。
加藤特任准教授

■論文情報論 文 名:“High-resolution cryo-EM structure of photosystem II reveals damage from high-dose electron beam”掲 載 紙:Communications Biology著  者:Koji Kato, Naoyuki Miyazaki, Tasuku Hamaguchi, Yoshiki Nakajima, Fusamichi Akita, Koji Yonekura and Jian-Ren ShenD O I:10.1038/s42003-021-01919-3

<詳しい研究内容について>
光化学系IIの立体構造をクライオ電顕で高精度に決定~生体内環境に近い状態での分子構造決定に光明~

<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
特任准教授 加藤 公児 (かとう こうじ)
(電話番号)086-251-8630
(FAX) 086-251-8502

同上
教授 沈 建仁(しん けんじん)
(電話番号)086-251-8630
(FAX) 086-251-8502

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
助教 宮崎 直幸 (みやざき なおゆき)

理化学研究所 放射光科学研究センター 利用技術開拓研究部門 生体機構研究グループ
グループディレクター 米倉 功治(よねくら こうじ)
(理化学研究所 科技ハブ産連本部 バトンゾーン研究推進プログラム
 理研-JEOL連携センター 次世代電子顕微鏡開発連携ユニット ユニットリーダー
東北大学 多元物質科学研究所 教授)

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